Episode 1
オーケストラに入団したての頃のお話です。
定期演奏会の指揮をしてくださるのは、桐朋の指揮科の尾高先生でした。
小さい頃からテレビで観ていたので、練習の初日はワクワク楽しみで胸がいっぱいでした。
練習が始まり、1stヴァイオリンの難しい箇所にきました。少し音程が合っていないようでした。
すると、指揮の尾高先生が「1stの表(おもて)の方だけ」とおっしゃいました。とても緊張したのを覚えています。
分奏のバージョンはその時によって違い、「1プルトの方だけ」「男の方だけ」といったぐあいです。
演奏会の本番までの3日間、難しい箇所にくると、心臓がドキンドキンしながら弾いていました。
今となっては、懐かしい思い出です。
注釈 プルトとは、楽譜を見る2人1組の数え方です。
表(おもて)とは、プルトの右側に座って弾く席順のこと。