Episode 2
オーケストラに入団するとすぐにヨーロッパ公演がありました。
アンコール曲は外山雄三作曲の「オーケストラのためのラプソディ」(カット版)でした。
この曲はNHK交響楽団の海外公演用に作られた曲で、私たちの海外公演も例にもれずアンコール曲になっておりました。
何回目かの公演のことでした。冒頭の鈴の音に続いてフルートが「信濃追分」のフレーズを演奏し終わると、
打楽器奏者が拍子木を打ち鳴らします。
「ターンタンタンタンタンタンタン、タタン!」
となるはずでしたが、最後を決めようとして力が入ったのか、
「ターンタンタンタンタンタンタン、ドンガラガッシャーン!」
と拍子木がものすごい音をたてて転がり落ちてしまいました。
しかし、楽団員たちは何事もなかったかのようにそのあとの「八木節」のフレーズを演奏しました。
演奏後、こちらも何事もなかったかのように、観客席は「ブラボー」と拍手の嵐でした。